AMDはここ数世代にわたり、ハイエンドGPU市場でNvidiaとの競争に苦戦してきた。Radeon RX 9070 XTでは戦略を転換し、RTX 5090を追う超高パフォーマンス路線ではなく、メインストリームゲーマー向けの卓越したコストパフォーマンスを実現。このアプローチが見事に功を奏している。
599ドルという価格帯で、749ドルのRTX 5070 Tiに匹敵する性能を発揮。さらにこのGPUの真の価値を高めているのがFSR 4の導入で、AMD初のAI活用型アップスケーリング技術を搭載。プレミアム価格なしで4Kゲームを楽しむなら、現時点で最も賢明な選択と言える。
購入先情報
AMD Radeon RX 9070 XTは3月6日発売でMSRP 599ドル。ただしサードパーティ製モデルは価格が上乗せされるため、699ドル以下の選択肢を狙うのがコスパ最適化のポイント。
AMD Radeon RX 9070 XT - ビジュアルツアー




技術仕様
RDNA 4アーキテクチャを採用したRX 9070 XTは、強化されたシェーダーコアに加え、専用RTコアとAIアクセラレーターを搭載。このAIアクセラレーターがFSR 4を駆動し、AMD初のAIアップスケーリングソリューションとして画質忠実度を優先している。
前世代のRX 7900 XTと比べCU(演算ユニット)数は64から84へ減少したものの、アーキテクチャ改良により手頃な価格で大幅な性能向上を実現。メモリ構成は256ビットバス上の16GB GDDR6へ縮小されたが、4Kゲームには十分な容量だ。
消費電力は304W(実測306W)と抑え目で、問題の多かった12VHPWRアダプターではなく標準8ピンPCIeコネクタを採用。出力端子はDisplayPort 2.1a×3とHDMI 2.1b×1を備える。
FSR 4:AMD初のAIアップスケーリング
FSR 4により、AMDは長年の課題だったアップスケーリング品質格差にようやくメスを入れ、AIを活用した優れた画像再構築を実現。FSR 3.1比で10-20%の性能低下が生じるものの、微細なディテールやテキストの明瞭さなど画質面の向上は、クオリティ重視のゲーマーにとって許容できるトレードオフと言える。
重要なのはFSR 4がオプション機能であり、必要に応じてFSR 3.1に戻して最大性能を引き出せる点。この柔軟性により、RX 9070 XTは競技シーンとシングルプレイヤーゲームの両ニーズに対応可能だ。
性能分析
ベンチマークでは、RX 9070 XTが価格帯を超える活躍を見せ、高価なRTX 5070 Tiをしばしば凌駕。4K解像度では前世代RX 7900 XTに対し17%の安定したリードを保ちつつ、優れたコストパフォーマンスを提供している。
主なハイライト:
- 『コール オブ デューティ ブラックオプス6』でRTX 5070 Ti比15%高速
- レイトレース適用時の『サイバーパンク2077』では5%差のみ
- 『アサシン クリード ミラージュ』で12%優位
- レイトレース版『ブラックミス ウーコン』では驚異の8%リード
テストシステム構成:
- CPU:AMD Ryzen 7 9800X3D
- マザーボード:Asus ROG Crosshair X870E Hero
- RAM:G.Skill Trident Z5 Neo 32GB @ 6000MHz
- ストレージ:Samsung 990 Pro 4TB
- 冷却:Asus ROG Ryujin III 360
総合評価
Radeon RX 9070 XTは、GPU価格の健全化を示す製品だ。600ドル以下でフラグシップ級の4K性能を提供し、絶対的な最速こそないものの、伝説的だったGTX 1080 Ti以来の最高の価格性能バランスを実現。経済的負担を抑えつつ妥協なき4K体験を求めるゲーマーにとって、現時点で最良の選択と言える。